2023.01.30 2023.08.09
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リーダーとメンバーがフラットに関係を構築する「サーバントリーダーシップ」とは

時代の移り変わりとともに、リーダーシップのスタイルも変化しています。その代表格として、近年注目を集めているのが「サーバントリーダーシップ」です。
リーダーが指示を出しメンバーがそれに従うという従来型のリーダーシップのスタイルとは違い、リーダーはメンバーをサポートしチームに奉仕するという、これまでにはない新しいリーダーシップスタイルです。本記事ではこれまでの従来型のリーダーシップのスタイルとの違いなどわかりやすく解説していきます。

【目次】

サーバントリーダーシップとは

時代の移り変わりとともに、リーダーシップのスタイルも変化しています。その代表格として、近年注目を集めているのが「サーバントリーダーシップ」です。

 

サーバントとは「執事」「召使い」を意味する言葉です。

執事や召使いという言葉と、統率力や指導力を意味するリーダーシップという言葉を組み合わせるというのは、不思議な印象を受けるかもしれません。

サーバントリーダーシップは、チームメンバーに対して奉仕し、その上で相手を導くという新しいリーダーのあり方を意味しています。

リーダーが指示を出しメンバーがそれに従うという従来型のリーダーシップのスタイルとは違い、リーダーはメンバーをサポートしチームに奉仕するという、これまでにはない新しいリーダーシップスタイルです。

リーダーが組織としてのビジョンを示し、部下を信頼して協力し合いながら、組織全体の成長を促していくことで、メンバーの主体性を高めたり、生産性を向上させる効果が期待できます。

 

サーバントリーダーシップが注目される背景

サーバントリーダーシップが誕生した背景には、ビジネス界の大きな変化が影響しています。現在は「VUCAの時代(不確実な時代)」と言われるように、先行きを見通すのがとても難しい時代と言われています。

様々な技術革新の進展によるビジネスの複雑化、これまであった終身雇用や年功序列といった制度の崩壊、働き方の多様化など、想像以上に速いスピードで起こるビジネス環境の変化がその要因です。

先を予測するのが難しいということは、過去に成功した方法、従来のやり方では、同じように成果を出し続け、発展するのが難しい時代になった、とも言えます。

このような「正解がわからない」時代を企業が生き抜いていくには、経営層やリーダーの力だけでチームを引っ張って行くだけでは限界があります。メンバーひとり一人の意識革新が必要になります。

「リーダーの指示を受けてから動く」のではなく、メンバーひとり一人が「主体者となり自ら考え、行動を起こす」ことが求められているのです。

リーダーの指示がなければ動けないメンバーではなく、自ら仕事を進めていくことができるメンバーが育つことで、チームの生産性は高まり、大きな成果をもたらします。

このような時代背景から、リーダーがコーディネーター的なポジションとして、様々な人材の適性を見抜き、その専門性を引き出し、能力を高め、成果を出すリーダーシップとして、「サーバントリーダーシップ」が注目を集めています。

 

サーバントリーダーシップと支配型リーダーシップの違い

これまでのリーダーシップは、リーダーが先頭に立って指示を出しながら組織を引き上げ、成果を出すスタイルが一般的でした。

これは「支配型リーダーシップ」とも表現され、地位の高さとそれに見合う影響力を持ち、その権力を行使してメンバーを従わせるスタイルで、トップダウンによる意思決定が基本とされてきました。

この従来型のリーダーシップには、どちらかといえばカリスマ性のある一人のリーダーがチームや組織を引っ張る傾向があり、スピード感を持って仕事を進めたい時には大変適しています。

特に、高度成長期には「支配型リーダーシップ」はフィットしていたため、ビジネスにおいては欠かせない存在として存在感を出していたという側面もあります。

 

これに対してサーバントリーダーシップは、メンバーを支え、その主体性に働きかけ、個人の能力を引き出すスタイルとなっていますから、支配型リーダーシップとは大きく異なります。

サーバントリーダーシップにおいて、重視している点は、以下のような点です。

【Point】
(1)目標達成のために、メンバーの意見をよく聞き、協力し合う
(2)自分の昇進よりも、メンバーに奉仕することが喜び
(3)メンバーとは信頼関係を築き、主体性を引き出す
(4)部下が失敗した場合もそこにある「学び」を得て、次なる成功へと導く

 

従来型のリーダーシップとは違い、部下の意見を聞き、尊重しながら目標達成を目指すサーバントリーダーシップは、場合によっては「部下の言いなりになっているのではないか」と誤解を受けることもあります。

しかし、インタラクティブかつフラットな意思決定を行うことができるサーバントリーダーシップは、先行きが不透明な現代社会には適しているスタイルであり、決して消極的なリーダーではありません。

そして、現代にそぐわない側面があるとはいえ、支配型リーダーシップが悪い、というわけでもありません。

どちらか一方が正解ではなく、状況やチームや組織のメンバーによってどちらを採用するかを選びながら、自分たちが成果を出しやすい手法を検討することが大切です。

 

サーバントリーダーシップの10の特性

サーバントリーダーには、10の特徴があります。ひとつひとつ詳しく見ていきましょう。

10の特性
(1)傾聴(Listening)
(2)共感(Empathy)
(3)癒し(Healing)
(4)気づき(Awareness)
(5)説得(Persuasion)
(6)概念化(Conceptualization)
(7)先見力・予見力(Foresight)
(8)執事役(Stewardship)
(9)人々の成長に関わる(Commitment to the Growth of people)
(10)コミュニティづくり(Building community)

サーバントリーダーシップの特性①傾聴

傾聴とは、メンバーの言葉に耳を傾けることを意味します。リーダーがメンバーの考えを聴くことは、メンバーの考え、意見を尊重している事につながり、メンバーとの信頼関係構築に最も高い効果を発揮します。

また、サーバントリーダー自身が自分の思いや考えにしっかりと耳を傾けることも、大変重要です。自分の心の声を傾聴することで、自分の方向性やビジョンがメンバーをはじめ、社会に役立つものかを見つめ直すことにもつながります。

 

サーバントリーダーシップの特性②共感

メンバーの話に耳を傾けた時、メンバーの立場でその気持ちを理解することが大切です。話を聴いて、評価したり、自分と比較したりするのではなく、相手のどう考え、どう感じているのかを理解しようとすることが「共感」です。

メンバーに対する敬意と感謝を忘れずに、上司と部下という構図ではなく、メンバーと同じフラットな立場から共感する姿勢を持つことが、メンバーとの信頼関係構築に必要と考えてください。

 

サーバントリーダーシップの特性③癒し

サーバントリーダーには、メンバーを癒す力も求められます。

メンバーは時として失敗したり、イメージ通りに物事が進まずに落ち込むこともあるでしょう。そのような時に、メンバーを精神的に支え、共に問題解決していくことが必要になります。

リーダーがメンバーの心のダメージや体への配慮を忘れずにサポートすることで、メンバーが本来持つ力を発揮させることが可能となります。そうやって欠けているところを補完し合える関係を作っていくことは、チームの成長や成果につながっていきます。

 

サーバントリーダーシップの特性④気づき

「気づき」とは、物事を敏感に感じ取り、その本質を捉える力です。

リーダー自身が自分の言動を振り返り「気づき」を意識することは、リーダーシップを高めることにつながります。

また、そのような視点を持つことで、メンバーの変化、チームの課題に対しても、その本質を捉え、解決できるようになっていきます。

 

サーバントリーダーシップの特性⑤説得

従来型のリーダーのように、権限においてメンバーを従わせるのではなく、相手の合意を得ながら、互いに納得しながら仕事を進めていくためには、時として説得する力も必要です。

ただ論理的に説明するのではなく、メンバーが納得できるように目的などを共有し、合意してもらうことで、メンバーにとっても仕事が自分事となり、主体性を発揮して取り組むことができるようになります。

 

サーバントリーダーシップの特性⑥概念化

サーバントリーダーには、今後組織がどのような展開をしていくか具体的なイメージを概念化し、それをメンバーに伝え、共有する力も必要です。

明確なビジョンを示されることで、メンバーも判断に迷った時にリーダーのビジョンを基準として行動することができるようになります。

 

サーバントリーダーシップの特性⑦先見

サーバントリーダーには、現在と過去の出来事を照らし合わせながら、直感的に今後を予測し、先を見通す力が求められます。

先見力を持つサーバントリーダーがいれば、判断に迷った場合でも現在の状況や、過去の経験から得た教訓などを照らし合わせて、今後を予測しながらベストと思われる判断が可能です。

 

サーバントリーダーシップの特性⑧執事役

メンバーと信頼関係を構築した上で、その成長をサポートするのがサーバントリーダーの重要な役割です。

自己の利益ではなく、メンバーが利益を得ることに喜びを見出し、自分が先頭に立つのではなく、一歩引いて見守る執事のような役割が、サーバントリーダーには求められます。

 

サーバントリーダーシップの特性➈成長

業務上の成果に直結する・しないに関わらず、メンバー一人ひとりの特性や資質を理解し、それぞれの成長に深くコミットすることが、サーバントリーダーには求められます。

メンバーの可能性や価値を信じて全力でサポートし、その可能性を引き出すことが使命ともいえるでしょう。

 

サーバントリーダーシップの特性⑩共同体

サーバントリーダーには、メンバーに対して一人ひとりがのびやかに成長できる共同体を作りだすことも、大切な仕事として課せられています。

リーダーとメンバーがフラットな関係で話ができる土壌があれば、メンバー同士も活発に意見交換するようになります。

メンバーが働きやすいコミュニティを形成することで、生産性の高い環境を作ることができるでしょう。

 

サーバントリーダーシップのメリット

サーバントリーダーシップを導入して運営すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

【Point】
(1)互いに傾聴する姿勢を持てるようになるため、安心感を持って仕事に取り組める関係構築が可能
(2)「リーダーが自分を尊重してくれている」とメンバーが実感することで、チームが強化
(3)メンバーが能動的にゴールへ向けて動くプラスの効果

 

 

チーム内でのコミュニケーションがスムーズになる

サーバントリーダーシップでは、メンバーをサポートするためにリーダーが存在しています。

従来のようなリーダーの指示を的確に遂行するために部下がいるというリーダーシップとは違い、メンバーの意見や考え、自主性を尊重するのが大きな特徴です。

その結果、より高い成果が出せたり、メンバーの成長が得られた時に信頼関係が深まり、スムーズなコミュニケーションが可能となります。

また、メンバー同士の意見交換なども盛んに行われるようになり、互いに傾聴する姿勢を持てるようになるため、安心感を持って仕事に取り組める関係構築が可能となります。

このように、リーダーとメンバー、メンバー同士とお互いの理解を深め、信頼関係を築くことでメンバーのモチベーションがアップするのも、サーバントリーダーシップの大きな特徴といえるでしょう。

 

メンバーとの信頼関係が強化され、士気が高まる

サーバントリーダーがメンバーの考えや意見を尊重することで、自然とメンバーから信頼を得ることができ、尊敬されるようになります。

「リーダーが自分を尊重してくれている」とメンバーが実感することで、チームが強化されていく効果が期待できます。

また、リーダーとしてもメンバーの希望や適性、スキルに対する理解を深めることで、効果的に成果が出せるポジションに配置することが可能となります。

そうなると、メンバーの士気が高まり、チーム一丸となって目標達成へ向けて積極的に仕事に取り組む雰囲気を高めることができるのです。

 

能動的にメンバーが目標達成するようになる

チーム内で目標やビジョンを共有できていることで、メンバーが能動的にゴールへ向けて動くプラスの効果が期待できます。

サーバントリーダーシップにより、メンバーのモチベーションが高い状態をキープすることが、周囲のメンバーへのパフォーマンスにも良い影響を与えるようになるのです。

 

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なぜ、リーダーシップには多くの要素が必要なのか? 今、求められるリーダー像

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株式会社FCE (編集部)

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