Big Issue

止まらない工場で、教育だけが止まっていた。

紙と回覧に頼ったままの現場教育

株式会社ミツハシ

株式会社ミツハシ

精米生産部 責任者 土橋様/同部 伊藤様

  • 学ぶ機会は、ラインの外にしかなかった

    機械を止められない現場で全員を集める研修は組めず、紙の資料を一人ずつ回覧するしか方法がなかった。
  • 学びが、現場の隙間に入り込んだ

    等級ごとの学びが四半期ごとに、工場に必要な教育が毎月。誰かの終わりを待たずに、それぞれのタイミングで学べるようになった。

この課題を解決したサービス

人財育成プラットフォーム Smart Boarding

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「人と組織の行動変容を、成果につなげる」 人財育成プラットフォーム

企業プロフィール

会社名
株式会社ミツハシ
事業内容
株式会社ミツハシは、「お米の一貫メーカー」を目指し、米の卸売業を中心に事業を展開する企業です。
精米から製品開発までを一貫して手掛ける中で、主に精米事業、炊飯事業、新規開発事業の3つを柱としています。
精米事業では高品質な製品を安定供給し、炊飯事業ではご飯や巻物、おにぎりなど多様な製品を提供。新規開発事業では冷凍ご飯やグルテンフリーのお菓子など革新的な商品開発を行っています
従業員数
342名(2026年3月末 嘱託含む)

現場の現状

  • 機械は止められない
    全員を集める研修が、組めない
  • 見ているのは自分の工程だけ
    前も、後ろも、見えていない。
  • 管理職になりたくない
    キャリアの絵が、描けていない

課題解決へのアプローチ

静かな違和感

お米を、ただ売る会社ではない。
産地から原料を仕入れ、精米し、炊き、加工する。「お米のメーカー」を目指す会社が、神奈川と埼玉に精米工場を構えている。
この会社は、教育を軽んじていたわけではなかった。食品安全の認証は、繰り返し教育を求める。AIBの基準にも、FSSC 22000にも、それは明確に書かれている。教育記録は、10数年前に作られたものが、法令や顧客要求に合わせて更新され続けていた。
それなのに――精米加工部の責任者には、消えない違和感があった。
「学ぶ機会が、つくれない」。
社員は自らラインに入り、設備を動かしながら製造に携わる。手が空く時間は、そこにはなかった。

気づきの構造

研修日を設けるべきなのか。社外研修に送り出すべきなのか。資料を増やすべきなのか――。
しかし現場に立つと、違う景色が見えてくる。社外研修の仕組みは、会社にあった。だが多くは、どこかへ足を運ぶことが前提だった。コロナ禍を経てオンラインの研修は増えた。それでも、現地に行かなければ受けられないものの方が多かった。工場を離れられる社員は、限られていた。でも、教育をおろそかにしていたわけではなかった。年間計画はあった。衛生教育も、安全教育も、毎年繰り返されていた。届いていなかったのは、自分の工程の「外」だった。
自分の工程しか見えない。だから、不満が生まれる。だが、その不満を誰に持っていけばいいのかも見えない。「前の工程が悪い」「他の部署が違うからできない」。視点が、自分にしか向いていない。改善の提案になるはずだった声が、誰かへの文句や、クレームに変わっていった。お互いに歩み寄れば、もっと良くなるはずのことが、そこで止まっていた。
そして、その視野の狭さは、もっと遠いところにも影を落としていた。年に1〜2回の面談で「これからどうなりたいか」と問われても、答えは「わからない」。前後の工程も、他の部署の仕事も知らないまま、自分の将来だけを描けるはずがなかった。
「管理職になりたくない」という声が、増えていた。
本当の課題は、学ぶ時間がなかったことではなかった。学んだ先に広がるはずの景色――自分の仕事の前と後、そして自分自身の数年後――が、誰にも見えていなかったことだった。つまり、学ぶ時間がなかったのではない。自分の仕事の外側を、見る機会がなかったのだ。

決め手と、実行のプロセス

必要だったのは、たった2つ。
「機械を止めずに、隙間時間で学べること」。そして「ビジネスの基礎を学ぶ教材と、自社の教育資料を、同じ場所に置けること」。
動画学習だけ、あるいは資料のアップロードだけ。単機能のサービスは多かった。両方を一つに束ねられるものは、他に見当たらなかった。
ただ、始まりはつまずきだった。
プログラムを組むこと自体で、しばらく止まった。考えすぎて、詰め込みすぎて、前に進まない時期が続いた。そこで、伴走する担当者とともに組み直した。等級ごとに求められる要件を一つずつ見ながら、8段階の階層に沿ったカリキュラムを引いていく。
配信は、四半期ごと。管理職から一般職まで、8段階の等級に紐づいた学びが、順に届くようになった。
同時に、工場に欠かせない教育も動き出した。製造中に金属反応が出たときの対応手順。食品表示。薬剤の扱い。労災対策。年間スケジュールに沿って、毎月ひとつずつ。もともとあったPowerPointの資料をそのまま教材にし、テストをセットで配信する。

配信する前に、自分で解く

この運用を担う伊藤様には、ひとつ決めていることがある。
配信する前に、自分だけに配信する。穴埋めにするか、選択式にするか。キーワードが入っていれば、正解として通るのか。――正しく理解して書いているのに、不正解になってしまう人を出したくない。
だから、新しい出題形式を使うときは、必ず一度、自分で解いてみる。見え方を確かめ、「これなら解ける」という状態にしてから、はじめて全員に届ける。
派手な工夫ではない。けれど、社員がつまずかずに受講できる土台は、この一手間の上にできていた。

その問題を解決したのはこれ!

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一人を、待たなくなった

変化がいちばんはっきり出たのは、時間の使い方だった。
紙で回していた頃、テキストは1部か2部しか用意できなかった。5〜6人、7〜8人と回さなければならない部署では、同時に学ぶことができない。「いつまでに終わらせてください」と書いても、期限を過ぎて戻ってくることの方が多かった。
そして、しばらくテレワークで出社していない一人のところで、資料が止まる。その先にいる社員は、学びたくても学べない。
準備し、配り、催促し、回収する。その一連が、まるごと消えた。
一人が終わらなければ次に進まない――そんな順番が、なくなった。

現場の反応

意外な人が、上位に来ていた。普段そういう話をしない社員が、進んでコンテンツを見ていた。ちょうど上司が変わったことも重なって、その社員の動きは目に見えて活発になった。業務改善に対して、意見を言う。それも、建設的に。「こうしたほうがいいのではないですか」。否定から入る人が少なくない中で、「いいですね、やってみましょう」と言える。
外部講師による対面研修を受けた社員は、半期の目標管理シートに、こう書いてきた。「これは、研修で学んだここを活かしています」。受講者からは、こんな声も届いた。「隙間時間でできるのはいいし、内容も面白い。ただ、工場は機械の音がうるさくて、聞こえない」。
――それは、受ける気があるという意味だった。会社は、環境を整える側に回った。中途入社の社員は言う。「前にいた会社には、こういう仕組みがなかったので、いいですね」。そして、2年に一度の風土調査。全社レベルで見れば、スコアはまだ低い。だが「品質」「顧客視点」、そして「協力体制・横の連携」の項目は、確かに微増していた。

まだ、途中である

受講率は、いまも課題として残っている。習慣づけは、乗り越えたとは言えない。新人教育の資料も、標準作業手順書も、まだ入れきれていない。紙で運用している部署も、社内には残っている。
それでも――これまで手をつけていなかった部署のひとつが、「やってみてもいいかな」と言い始めた。
目指しているのは、OJTだけに頼らない教育だ。「この操作をやるから、一度動画を見ておいて」と言える状態。基礎が届いた上での、現場の指導。
いろいろな場面で使うようになれば、使うこと自体が習慣になる。
ラインは、これからも止まらない。だから、学びの側が動き続ける

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解決へのプロセス

変わったのは、誰が教えるかではない。
教えたことが、どこに残るかだった。

学びは、順番を待つものだった

学びは、順番を待つものだった

テキストは1部か2部。5〜6人、7〜8人と回す部署では、誰かが終わらなければ次の人に届かない。テレワークで出社していない一人のところで、部署全員の学びが止まった。そして現場は、自分の工程の外を見る機会を持たないまま、不満だけを溜めていた。

学びは、それぞれのタイミングで動き出した

学びは、それぞれのタイミングで動き出した

等級に応じた学びが四半期ごとに、工場に必要な教育が毎月、誰を待つこともなく届く。準備と回収の時間は消え、代わりに「こうしたほうがいい」という提案が現場から出るようになった。品質、顧客視点、横の連携――2年に一度の風土調査のスコアが、静かに動き始めた。

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